化学情報分析実習

本実習は、エンジニアリングデザイン教育の一環として、機能性分子を設計するために必要な分子モデリングについて体験的に学習します。有機化学の知識から考えられる分子構造を自由に発想して、それが最適コンホメーションを取ったときに、どんな形になるのか、またそれは意図した通りの形かどうかを検証して報告してもらいます。分子の形は量子科学の原理に基づいて決定されますが、その形によって分子のさまざまな官能基の空間配置が決まります。このように分子の形状を設計することは、特に生体分子のように官能基の配置と配向が制御された相手との最適な相互作用を実現するために、分子設計上きわめて重要なスキルです。レセプターなどの蛋白質に作用する分子を設計する薬剤開発の現場などでは、このスキルは必須のものとなっています。
本実習では、有機分子の量子化学計算を体験して、1)分子構造の最適化、2)電子遷移とUV・可視光吸収帯の推定、3)分子振動と赤外吸収帯の推定、4)反応活性化状態(遷移状態)の解析と反応経路の推定、の4つのスキルを身につけます。教科書に現れる2次元的な分子構造の表現は、決して実際の姿ではないということを確認し、標準生成エンタルピーの値を見ながら、分子の構造安定性について考察できるようになります。また、電子遷移の計算から物質の発色やUV遮蔽機能の設計を、あるいは赤外吸収の計算から温室効果ガスの作用メカニズムを学習したり、輻射熱を閉じ込めて保温する材料の設計を体験します。最後に、化学反応の遷移状態を発見できるかどうかを調べることで、有機化学反応が実際に進行するかどうかを推定する課題に取り組み、その結果と考察をレポート化して提出してもらいます。

化学情報分析実習(上田)資料配布用

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